大学生インターンが気づかせてくれた新たな可能性
6代目佐藤 光弘さん
巻組との関わり
巻組が運営する実践型インターンシップ・プログラムの大学生インターン受け入れ
明治42年創業の島津麹店は、石巻で唯一の糀製造所です。私は2014年に6代目に就任し、父とともに糀づくりの伝統と職人技を受け継いでいます。
糀づくりの仕事はこれまで、ほぼ家族だけでやってきました。いまでも私と父、パート1名だけです。そこに1ヶ月間の大学生インターンをお預かりすることになったのは、巻組さんの働きかけがあったから。それ以前にも1日だけの職場見学は受け入れたことがありましたが長期は初めてで、2018年冬に最初の2人を迎えたときは不安だらけでした(笑)。
これまでに4名の大学生を迎えましたが(取材時には次の2名を募集中)、結論からいうと受入れの大変さを補って余りあるリターンを得られています。彼女らが取り組んだテーマは、主力商品「華糀」を使った新レシピ開発やマーケティング、催事出展時の空間デザインです。いずれも私たちが気づかなかった観点から提案をもらい、それが結果的に経営課題もあぶり出してくれることになりました。
たとえば、うちのお客様は健康や美容の意識の高い40~50代の女性が中心で、これまで開発したレシピは玄人寄りが多かったのですが、インターン生は「親子で食べる3時のおやつ」、「火を使わない簡単なレシピ」といった発想をもたらしてくれた。さらにその過程で、明治創業という「老舗感」が見えない、という指摘も出てきたのです。それで再発見できたのが、昔はどこの家庭でも作っていた「仕込み味噌」。既製品に押されてめっきり減っていましたが、今回その新しい可能性に気づかせてもらいました。
巻組の学生インターンは2名ペアになっているのもいいですね。企画・経営系とデザイン系とでバランスがいいので、考え方が偏らず、効率的に分業ができます。巻組の担当コーディネータさんのフォローもきめ細かく、途中で軸がブレそうになるとちゃんと軌道修正してくれますし、遠方からの学生さんにはシェアハウスを用意してくれるのも助かります。
食品業界は厳しく、常に新しい価値観を取り入れていかないと生き残れません。私たちは巻組のインターンを受け入れることで、それまで考えたこともなかった「人材育成」の大切さに気づきましたし、この経験をベースに株式会社化や社員の採用なども検討を始めています。これからも巻組さんの協力をいだたきつつ、日本古来の伝統食品「糀」の文化を次世代に伝えていきたいと思います。
(2019年7月取材)