【代表コラムVol.4】 「社長」と「母親」、兼業中です
株式会社巻組代表の渡邊です。いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。今回は、少し個人的なテーマでお届けしたいと思います。
私は昨年(2023年)6月に第一子を出産しました。まもなく1歳半となる娘の子育て真っ最中です。
首都圏から宮城県石巻市に移住した私にとって、人口13万人の石巻は「ちょうどいい田舎」。生活に不便はありませんが、人口が相対的に少ないぶん物理的な余裕があって、いろいろな意味で子育てしやすいと感じています。子どもを安心して遊ばせられる公園もたくさんあるし、この春、保育園を探すときも空き待ちの苦労などありませんでした。
私のように子育てと企業経営を同時並行している女性は、いまやそれほど珍しくないかもしれません。それでも、女性にとって出産・子育ては一大イベント。「社長」と「母親」の兼業を始めるまでの私自身の思い、やってみて感じることを、思いつくまま書いてみたいと思います。
不器用だった20代後半は仕事に集中
巻組の創業は2014年(法人設立は2015年)。その前年の2013年、25歳で地元・石巻市の男性と結婚し、以来ずっと夫の両親と同居ですから、「社長業」と「嫁業」は最初から並行していました。石巻はそこまで“イナカ”じゃないといっても、やはり既婚女性に対する「子どもはまだ?」という周囲のプレッシャーはありましたし、それを辛いと感じたこともあります。
私自身子どもは欲しかったですし、出産が難しい年齢になる前に産みたいな、とは思っていました。でも、なにぶん事業を立ち上げたばかり。右も左もわからないなりに全国を飛び回っていたのに加え、法人設立と同時に山形県の大学講師を兼務していたのでので、週の半分は山形という生活です。その頃の私はまだいろいろなことが不器用で、時間の使い方も下手でしたから、子育てと両立できるというイメージは持てませんでした。
そんなわけで、20代後半から30代初め頃までは、これから事業をどう発展させるかに全力集中していた時期だったと言えます。
コロナ禍で気づいた「案ずるより産むが易し」
転機となったのは、2020年に始まった新型コロナウィルスの感染拡大で、私生活や仕事に関する価値観が変化しました。
何事も、計画通りにいくわけじゃない。ビジネスも人生も、自分がこうしたいと思った通りに行くとは限らないわけです。もちろん、そのために最大限の努力をするのは大前提ですが、結果その通りに行くかどうかは神のみぞ知ることなんだ、と悟りました。
であれば、これをやりたい・こうなりたい、と思っていて、そのチャンスがめぐってきたなら、迷わず即決すべき。「でも今はこうだから・・・もしもこうなったら・・・」とあれこれ考えず、そのときはそのとき、とすっぱり割り切ればいいんだと。
子どもというのは授かりものです。一方、女性の出産には生物学的なタイムリミットがあります。たしかに出産によって仕事に一定の制約はかかるでしょうが、それがどの程度なのか、どうしたらそれを克服できるか、やってみなければわかりません。「両立」のバランス感覚は、実際に試行錯誤することでしか身に付かないわけで、やる前から心配していてもムダだと気づいたわけです。
周囲の助けも借りながらバランスを模索
妊娠がわかったのは2022年の秋でした。その後、臨月まで出張もこなしていましたし、出産当日からパソコン仕事はしていましたので、その意味で産休・育休はとっていません。でもやはり、不動産業は物理的な現場がある仕事なので、その現場に出られる時間が減ったぶん、長年一緒に働いている仲間の社員には大いに助けられました。甘えさせてもらった部分もあり、本当に有難いと思っています。
私の場合、自宅には夫の両親もいますし、東京方面に出張のときは埼玉の実家に預けられるので、いわゆるワンオペ育児でないのは幸いです。それでも、この春、0歳児で保育に入れるまでは、子どもを背負って金融機関の書類にサインしに行って「大変ですね」と言われたりはしました。それ以降も、連れていける出張には連れていくようにしているので、娘は1歳にして月2回は新幹線に乗っています(笑)。
正直、こんなに小さいときから保育園に預けていいのか?とか、逆にもっと会社の事業拡大に集中すべきではないのか?といった葛藤は常に抱えています。感覚としては、仕事と子育てを「両立している」というよりも、娘と一緒に過ごす幸せな時間と、従業員を抱える会社社長としての業務時間の「ちょうどいいバランスを模索している」というのが正しいかなと思います。
いろいろな立場の人が働きやすい職場に
巻組でもコロナ禍以来、リモートワークを可能にしました。もともとうちの社員はみな自律型。私は完全な信頼を置いているので、それほど心配はありませんでした。ただ、やってみて実感するのは、不動産というリアルなものを日々運用している限り、100パーセントのフルリモートは難しいということ。私自身が子育てによって出社時間を減らしたこともあり、一時はどうしてもフォローアップが不足し、業務量の差などから少々ギクシャクした雰囲気になってしまったことは否めません。
そこで、巻組としてあらためて「顔を合わせることの価値」を見直すとともに、細かいルールを再整備しました。最近は大手企業でも一時のフルリモートから出社型に戻すケースが見られますが、それと同じ流れだと思います。ただし、週5日朝から晩までオフィスにしばりつける意味はないので、現在、パートを含む8人の社員全員が出社して顔を合わせるのは週1日としています。
また、このほかにスポットで民泊の清掃をお願いする主婦の方が10人います。これら従業員の中には私と同様、子育て中の人も少なくありません。世の中には、子育てに限らず様々な事情でフル出勤の難しい人がたくさんいます。不動産業界は清掃以外にもスポットで委託できる業務が結構あるので、そういう人たちも比較的働きやすい業界だと言えるかもしれません。優秀な人材を獲得するためにも、私自身の経験も鑑みながら、いろいろな立場の人が働きやすい職場づくりを模索していきたいと思っています。
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