気づきある問いと向き合い
自分の信念を見つめ直した石巻松下村塾

一般社団法人「Hito Reha」代表理事横山 翼さん

巻組との関わり

起業家育成プログラム「石巻版松下村塾」に参加

出身は関西です。石巻に来たきっかけは東日本大震災ですね。震災前後に家族を亡くし、震災直後は震災に向き合うことができずにいました。でも少しづつ落ち着いてきたときに自然と東日本大震災に向き合いたいと思いました。でも、その時は向き合い方が分からなかったから、とりあえず福島の南相馬くらいから陸前高田まで沿岸沿いを北上しました。その時すごく衝撃を受けて、ここで何かしたいと思ったんです。原発の影響で人がいなかった福島とは違い、宮城には人がいっぱいいて復興に向けて頑張っている雰囲気を感じました。石巻を選んだのは直感です。何かここだったらやれそうと思いました。復興に関わるとき、僕もそこに住んで、住んでいる人たちと一緒に住民としてやっていきたいと思いました。そこで2014年から、石巻に住み理学療法士の仕事を始めました。

理学療法士になってから、僕が日常的に行くカフェや温泉に、障がいを抱える方やその家族がいないことにおかしいと思いはじめました。でもなぜそのような場所に、障がいを抱える方がいないのか理由が分からなくて悶々としていました。その背景的なものが良く分からない状態が続きました。2年ほど前に障がいを抱えた方と一緒に海に入るイベントに参加しました。そこで障がいを抱えた方も、きっかけがあって一歩踏み出すことができれば、自分自身に色んな可能性が感じられるということに気が付きました。障がいとか関係なく、その子たちのやりたいことや家族の想いに寄り添えるんじゃないかと思いました。今まで感じていた課題と僕の知見を合わせて、サービスを提供したら世の中のためになるのではないか。そう思い2020年2月に一般社団法人HitoRehaを設立しました。


HitoRehaでは主に2つのサービスを提供しています。まずは月1回の対話カフェ。なかなか普段話すことができない本音を話すことができる安心安全な場を提供しています。カフェみたいな雰囲気なので、ちょっとリッチな空間でご飯を食べたり、コーヒーを飲みながらリラックスして話してもらっています。2つ目がオンラインのコミュニティです。石巻や登米といった、限定されたエリアを越えたコミュニティを作っています。普段会うことのできない顧客同士のつながりを大切にしています。なぜなら、オンラインで障がいを持った方とその家族の原体験が、同じ経験をしている人やしてきた人を助ける可能性があると思っているからです。その人しかもっていない情報や原体験を話したり、聞いたりすることができるコミュニティとしてオンラインのサービスがあります。HitoRehaでは、障がいを抱えている方やその家族に、可能性に気付いてもらい、それを通して社会とのつながりを持ってほしいと思っています。その可能性に気付けるように、僕たちHitoRehaが何か一つきっかけを作れたら良いなと思っています。


2019年に巻組が運営する松下村塾に参加しました。松下村塾は自分自身を見つめ直す良い機会になりました。参加前にHitoRehaを設立することは決意していましたが、背景にあるものを松下村塾で見つめ直すことができました。自分がどういう思いをもって石巻に来たのかとか、何を思って今設立しようと考えているのかとか。ビジネスモデルとは違って、自分の信念みたいなものを見つめ直すことで、言葉にできるようになりました。言葉にできるようになったことで、他の人に伝わりやすくなり、理解されやすくなりました。理解されると共感が生まれました。共感が生まれることで、協力してくれる人がいたり、サービスを受けてくれる方が増えたり、自分もそうだったんだよねとお話してくださる方がでてきました。

HitoRehaを設立する背景がしっかりしたことで、基盤が出来上がり、大丈夫だと思える自信につながりました。心が折れそうなときも基盤がしっかりしているから大丈夫という認識に変わりました。松下村塾を通して、それくらい背景が整理できたことは強みです。

松下村塾の良いところは、僕の信念を揺らがすような深い問い・僕に刺さる問い・素晴らしい問いをくれたことです。いろんな方が僕に問いをくれて、それに僕が向かい合うというかんじでした。気づきある問いがあったからこそ、良い解答が得られたと思います。


近い目標としては、障がいを抱える方とその家族の可能性をサービスを通して引き出していきたいと思っています。そうする中で、地域の人やいろんな人を巻き込んで、僕たちHitoRehaがそうしたというよりは、巻き込まれた地域の方々と障がいを抱える方と家族の接点を生んで、暮らしやすいっていうのを創っていきたいです。
将来的には、今僕たちが解決しようとしている課題は日本全国にあるのではないかと思ってます。個人が持つハンディキャップを課題としてとらえられるのでなく、個性と認識される社会をつくることで解決していきたいです。そして日本の社会が変われる策を打ち出していけたらよいなと思っています。

地域に根差して、障がいを抱える方と家族の生きやすさを創っていくと共に、日本全体のそういった課題を改善するのを目指して頑張っていきます。


(2020年4月取材)

気づきある問いと向き合い
自分の信念を見つめ直した石巻松下村塾 気づきある問いと向き合い
自分の信念を見つめ直した石巻松下村塾 気づきある問いと向き合い
自分の信念を見つめ直した石巻松下村塾