不動産業界も変革は必至
「人口が増えてお金が儲かることが幸せ」という価値観を変える

信和物産株式会社 代表取締役 比佐野皓司さん

巻組との関わり

空き家不動産の紹介

比佐野皓司氏プロフィール
1981年創業の石巻市の不動産会社、信和物産株式会社代表取締役。千葉県出身。大学で不動産学を学び、都内で就職するも、東日本大震災で津波被災した妻の実家の不動産会社を継ぐこととなり、2012年に石巻市へ。内陸部に社屋を再建し、地域密着型の不動産業を営む。主にアパートや店舗などの賃貸管理を手掛け、2020年対談時点で管理戸数は約1,300戸。巻組のビジネスモデルに期待を寄せ、賃貸・売却物件の紹介などでご協力いただいている。

巻組代表・渡邊(以下渡邊):比佐野さんと出会ったのは2015年の秋ごろ、巻組の最初のシェアハウス「COMICHI石巻」を見に来ていただいたときでしたね。

比佐野さん(以下敬称略):そうですね。「COMICHI石巻」を見学した2015年当時、まだ石巻にはシェアハウスというものがなかったと思います。実は、お会いする前はちょっと構えていたんですよ。震災直後の石巻にはいろんなヨソモノが来ていろんなことを始めていて、中にはかき回すだけでいなくなっちゃう人もいたので…。だけど、「COMICHI石巻」の2階シェアハウス部分は全部自社で借り上げていると聞いて、ああこの人は本気だぞと。そこから巻組さんのファンになりました。(笑)

渡邊:いや、素人ゆえの怖いもの知らずで飛び込んだだけです。(笑)

比佐野:僕自身、東日本大震災の翌年に東京から石巻に来て、地方の不動産市場については何も知らないまま妻の実家の家業を継いだんですが、2012年当時の石巻はまだ震災特需バブルで、家も土地も右から左へ売れていき、業界は笑いが止まらない状態だったんです。でも、こんな状態がいつまでも続くわけがない。そんな危機感をずっと抱いていました。

渡邊:信和物産さんは賃貸管理をメインにされていますが、当時は空室もなかったですよね。今はまた何千という単位の空き家が課題になっていますが。

比佐野:ええ、当時は問い合わせがあってもお断りしていたくらいです。でも、これから絶対に空室は増えると思っていたし、長期的に見て地方の人口減少は止まらない。将来の経営について、会社を継いでから最初の3年間はずっと悩んでいました。その結果、自分の物件だけうまく回ればいいのではなく、地域全体を盛り上げる必要があると気づいたんです。不動産価値を維持するためには、「このまちに住みたい」と思う人を増やすことだ、と。ちょうどそのころに巻組さんと出会って、ものすごく刺激を受けました。巻組さんの物件にはエッジのきいた魅力的な入居者がいて、そこに惹かれてさらに全国からオモシロイ人たちが集まってくる。僕が考えている不動産の在り方に近いなと思いました。

渡邊:ありがとうございます。でも正直、石巻というまち全体を盛り上げることはあんまり目標として意識してないんです。事業収支的には「不動産の価値向上」を目指しますけど、やっていることとしては目の前の物件ひとつずつ、入居者一人ひとりの幸せを大事にしたい。たとえば、うちのシェアハウスに裏庭で畑を耕して烏骨鶏を飼って、という入居者さんがいるんですけど、そうやってすごく楽しそうに住んでくださっていると、そこにフォロワーが増えていく。そういう小さなエリアの盛り上がりが増えていけばいいのかなと。

比佐野:そのシェアハウスも、もと空き家だったんですよね。

渡邊:そうです。接道していないとか、いわゆる絶望的な条件の空き家でした。

比佐野:そういう空き家って、貸すにも売るにも一般の不動産会社では手を出せないんですよ、利益が出ないから。巻組さんのすごいところは、自社でリスクをとって借り上げて、コストを抑えつつ魅力的にリノベーションして、エッジのきいた入居者を生み出すコミュニティを作り上げていることですね。

渡邊:初期コストを抑えてとりあえずやってみようというリスクテイクの姿勢は、クレイジーとも言われます。(笑)

比佐野:ふつう大家さんはリスクを嫌いますからね。相手がヨソモノでベンチャーみたいな人となれば、なおさら不安で貸したくないと思ってしまう。そこをなんとかするため、わが社でも6か月という短期の「お試し」賃貸を、店舗物件で提案し始めています。半年でうまくいかなかったら明け渡すという条件なので、大家さんも安心するし、借りる方も改装など高い初期費用をかける前に手ごたえを試せます。

渡邊:そうやって既存の不動産会社さんが新しい仕組みに挑戦してくだされば、社会的なインパクトも大きくなりますね。巻組の扱う物件は、全体から見たらまだわずかでニッチですから。

比佐野:でも、巻組さんのビジネスモデルこそ地方都市でやっていく魅力なんじゃないかな。誰にもマネできないし、大手は絶対に参入できませんから。

渡邊:一方で、巻組の物件を見て、他の空き家オーナーさんたちが「じゃあ自分たちも!」となって、私たちのやり方が広がってくれるといいなとも思うんですよ。エリアの価値を上げる方法は、空き家を全部壊して新しい建物を建てる再開発だけじゃないはずなんです。新築のときは良くても、後からまた「困る大家さん」が再生産されるのでは意味がないので。

比佐野:要は、「家は新しいほどいい」という文化を変えることですね。築古物件の魅力を伝え、愛着を持って長く使われてきたものの方が価値があるという方向へシフトしていかないと。特に地方では、築30~40年のアパートを建て替えたり、多額のコストをかけて新築そっくりにリノベしたりしても、その分家賃が上げられるとは限らない。それより、コストを抑えて古いものの良さをあえて残すような改装にとどめ、家賃を据え置いた方がいい場合も多いです。

渡邊:そう、そんなにお金をかけなくても、たとえばちょっとした照明の工夫なんかで雰囲気のいい空間は作れるんですよね。みんながみんな、新築を好むわけではないと思いますし。

比佐野:でも実際、巻組さんの物件では入居者募集や滞納者で困ったことはないんですか?

渡邊:ありがたいことに、ほとんどないですね。やっぱり「そこに住む人の幸せ」に勝るものはないと思うんです。滞納する人って、実は経済的につらいというより、心がつらい人だったりするでしょう。お互い気持ちよく家賃のやりとりができる環境づくりが、地道ですが大事かなと。

比佐野:まさに不動産は人生に直結しているし、感情が絡んできますからね。弊社の場合、新型コロナウイルスの影響は思ったより少なく済んでいますが、それでもやはり大家さんとテナントさんの板挟みになって苦労することはあります。非常事態でみんな必死になっているときこそ、お互い感謝の気持ちは大切だと思います。

渡邊:そのコロナ禍で、首都圏のホワイトカラーの地方移住や二拠点居住はある程度の規模で進むと思いますが、とはいえそれが地方の人口増加に直結するわけでもなさそうですね。

比佐野:いくら移住者を増やしても、全体として人口減少は止まらないですよ。不動産賃貸業界も、なるべく高い家賃で儲けるという旧来モデルを続けていたら、この先立ち行かなくなるでしょう。それを素直に受けとめて、「人口が増えてお金が儲かることが幸せ」という価値観を変える必要があります。たとえば、元空き家に住んで野菜をつくって烏骨鶏を育てるっていう生活は、お金に換えられない豊かさだと思うんですよ。人口も経済も縮小する環境は変えられないけど、自分の見方を変えれば、たとえ収入が減っても豊かな暮らしはできるはずです。

渡邊:この10年だけでも地震、台風、新型ウイルス、いろんなことが起きましたけど、これからさらに予測不能な、もっと最悪なことが起きるかもしれない。それらは全部受け止めるしかないのだけど、そんな中でも最強なのは、たくさんお金を持っていなくてもそれを不幸せだと感じない人。つまり、何が幸せか自ら思考できて、社会資本や関係資本を豊富に持っている人たちだと思うんです。そんな人たちがたくさんいることが幸せな社会だと。

比佐野:そういう社会を目指していきましょう。

渡邊:ありがとうございました!

(2020年6月対談)

不動産業界も変革は必至
「人口が増えてお金が儲かることが幸せ」という価値観を変える 不動産業界も変革は必至
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