【代表コラムVol.2】

巻組がやってる「人材プラットフォームづくり」って何?

 

 

巻組は今年で創業10年。おかげさまで最近は、多くの方が「空き家活用シェアハウスRooptの運営会社」として認識してくださるようになりました。

 

その方々が巻組の事業概要をご覧になって、「場所づくり(不動産再生・賃貸運営)」以外にも「人材プラットフォームづくり」や「クリエイティブサービス」という事業があるのを知り、「どんなことをしているのか」とお尋ねになることがあります。

 

「人材プラットフォームづくり」の内容は、「Creative Hub(クリエイティブハブ)」というクリエイター・コミュニティの運営や、「Third Self(サードセルフ)」という会員制コワーキングスペースの運営が中心です。また、「クリエイティブサービス」はデザイン系のクライアントワークの総称で、店舗などの設計・内装からロゴやポスターといったグラフィックデザインまで手掛けています。

 

一見、空き家活用やシェアハウス運営とは無関係に見えるこれらの仕事を、なぜ巻組がやっているのか。今回は、Creative Hubを例にとってそれをご説明したいと思います。

 

賃貸業界の将来にクリエイターの力を

 

Creative Hubは2020年に誕生した、クリエイターを支援するコミュニティです。活動実績やジャンルを問わず、自ら楽しむため能動的に制作活動をおこなう人はすべて「クリエイター」と定義。地方でそうした活動をしたい人に滞在・交流・作品発表の場を提供するために立ち上げました。現在、約50名がオンラインで交流しながら全国6カ所にあるCreative Hubの拠点を利用して活動しており、年に2~3回はグループ展も開催しています。

 

Creative Hubのメンバーは、巻組の物件の入居者ばかりではありません。むしろ、利用していない人のほうが大半です。Rooptシェアハウスは各地に増えていますし、1日から滞在できるので、もちろん気軽に利用してくださるのは大歓迎。でも、だからといって、いわゆる「見込み客」をプールするためにこのコミュニティを運営しているわけではないのです。

 

ではなぜやっているかというと、私たちはこういう能動的な「クリエイター」の力を育むことこそ、賃貸業界の将来にとって不可欠だと信じているから。その信念は巻組の初期の経験に基づいています。

 

心のおもむくままに活動できる場所を

 

巻組は空き家再生・運用を専門としてきましたが、なかでも創業当初に手掛けた物件は、築古で立地も悪いなど、資産価値がゼロに近いものがほとんどでした。改修予算も最低限でしたから、一般的な賃貸アパートに比べたら不利な条件だらけ。でも、そうした物件だからこそ、逆におもしろがって使ってくださる人たちがとても多かったのです。

 

DIYで棚や収納をつくったり、土間をアトリエに改造したり、周囲の竹藪を刈って炭を焼いたり。ものづくりへの感度が高い彼らは、イマジネーションを駆使して、むしろ一般の賃貸ではできない自由なライフスタイルを実現しているのでした。そして、楽しそうに暮らしている彼らの周囲には、自然と同じような思考の人たちが集まってくるようになります。

 

その過程を見て私は、こういう人々のコミュニティがこれから空き家活用の鍵を握る、と考えるようになりました。巻組は、彼らが心のおもむくままに活動できる様々な「場」――住まいだけでなく、仕事、趣味、交流、作品づくり、発表などに使える場所――を提供することで、コミュニティづくりを支援していきたい。それが、後のCreative Hubにつながったのです。

 

「いまあるもの」をいかに再生するか

 

クリエイティブな人材は、なにか問題が起きたとき、まず自分で何とかしてみようとする能動性を持ちます。住まいで言うと、たとえば水道から水が出なくなったら、業者に電話する前になぜ水が出ないのか想像してみる。虫が入ってきて困るなら、その原因を探ってみる。自分で解決方法を考えて試してみる。そのプロセスまで楽しんでしまう。そんな人たちです。

 

もちろん、大家が修繕の責任を放棄するわけではありません。が、「大家にクレームを言って終わり」のユーザーばかりでは、人口が減っていくのに、クレームの出にくい新築住宅ばかり供給され続け、一方でどんどん空き家が増えていく、という不動産業界の問題は永遠に解決しません。

 

実際、大手が手掛ける新築物件の市場は、すでに飽和状態です。そうではなく、「快適さ」の物差しを見直し、クリエイティブなユーザーと一緒に「いまあるもの」をどう再生していくか。賃貸経営の発想をその方向に転換していくことは、不動産業界全体の将来を変えると思っています。

 

巻組のミッション

さらに言えば、私たちの目標は、単に「空き家問題にソリューションを提供すること」ではありません。最上位のミッションは、人々のライフスタイルをもっと自由で豊かなものにすること。

 

Rooptシェアハウスに住む以外にも、Creative Hubに参加して制作活動をしたり、Third Self会員としてコワーキングスペースを利用したりするうちに、そこで生まれた交流がライフスタイルのポジティブな変化につながった例を、巻組はこれまでいくつも見てきました。これこそ私たちのビジネスの醍醐味です。

 

なかには、夢だったお店を開いたり、好きなことで起業したりする人もいます。そして、その際に店舗デザインや会社のロゴ制作を巻組にご発注いただくことも少なくありません。そうやって巻組の事業はすべて、一つのミッションに向かって有機的につながっているのです。

 

人の自由な生き方、クリエイティブなライフスタイルを支えるための不動産屋でありたい。巻組はそのための施策をこれからもずっと考えていきます。