【代表コラムVol.5】なぜ巻組は「一棟貸し」ゲストハウスに注目するのか?

こんにちは、巻組代表の渡邊です。

おかげさまで巻組は今年で会社設立10周年を迎えます。私たちは当初から地域の「空き家」にフォーカスし、様々な活用方法を模索してきました。石巻市内のシェアハウスから始めて、現在では宮城県内を中心に20件ほどの物件を運営しています。

その半数を占めるのがシェアハウスを含む賃貸住宅ですが、ここ数年、私たちが力を入れているのがゲストハウス。中でもプライベート性の高い「一棟貸し」スタイルに注力しています。今回はその背景について少しお話ししましょう。

意外に多かった「貸し切り需要」に対応

巻組が初めてゲストハウスを開業したのは2020年のことでした。なぜ「賃貸住宅」だけでなく「宿泊」のサービスを始めたのか、というと、2010年代から注目を集め始めた「多拠点居住」というライフスタイルに対応したいと考えたからです。平日は都心で働き、週末はただの観光旅行とは違う形で地方に関わる。いわゆる関係人口としてカウントされるような人たちの増加に合わせ、そういう層の受け皿となる施設を石巻にも作りたい、というのが出発点でした。

第一号は、Roopt石巻泉町-OGAWA-です。

roopt OGAWA
Roopt OGAWA(宮城県石巻市)

これも空き家を改修した物件なので、個室3部屋のほかにダイニングやリビングがあります。実は、当初は一棟貸しではなく3つの個室を別々に販売していました。ところが、フタを開けてみると意外に多かったのが、グループ貸し切りのご要望だったのです。男女で部屋を分けたい大学生のグループや2家族での利用などなど。そうした方々にとってはキッチン&リビングで宴会やイベントができるのも魅力のようでした。

実のところ、巻組としても1部屋ずつ販売するより、大人数で借り切っていただいたほうが運営効率上はベターです。OGAWAに続き、シェアハウスの一室にお泊りいただく民泊型ゲストルームも3件ほどオープンしていますが、全体としては一棟貸しのモデルにシフト。現時点では宮城県内で5棟を運営しています。

●巻組の一棟貸しゲストハウス(2025年2月現在)

  • Roopt石巻泉町-OGAWA-(石巻市)
  • Roopt陸前赤井駅前(東松島市)
  • Roopt石巻羽黒町(石巻市)
  • Roopt仙台薬師堂(仙台市)
  • Creative Hub加美町(加美町)

これに加え、今年3月には新たに2棟がオープン予定です。1棟は宮城県松島町、もう1棟は長野県松本市で、巻組初の宮城県外の地方都市物件となります。準備整い次第、詳細をご案内しますので、楽しみにお待ちいただければと思います!

一棟貸しのニーズはどこにある?

上記の一棟貸しゲストハウスの利用者は、日本人と外国人が半々くらいの比率となっています。宮城県内は全国的に有名な観光地が少ないこともあり、(東日本大震災の復興ツーリズムを除けば)日本人に関しては県外よりも県内旅行者が多い印象です。外国人については、国籍の統計はとっていませんが、どちらかというと欧米系が多いかもしれません。

こうした利用者の方々を見ていると、「一棟貸し」タイプの需要がどこにあるかがわかってきます。

●他人と接触しない環境を求める人

寝室は個室でも、浴場や食事処では他の宿泊者と一緒になるため、旅館は避けたいと考える方々。コロナ禍を経て、他人と接触しない環境へのニーズが一定程度、定着していると思われます。

●小さなお子さんのいる家族

泣いたり騒いだり走ったりは子どもの特権。とはいえ、通常の旅館では他の宿泊者には迷惑になりますし、豪華な食事も落ち着いて食べられません。周囲に気兼ねなく、自分たちのペースで過ごしたいという方々。

●里帰りで実家には泊まれない(泊まりたくない)家族

年末年始やお盆に家族で里帰りしても、全員で実家に寝泊まりするとなるとお互いに大変です。寝る場所だけは実家の近くに別途確保したいという方々。

●有人サービスを煩わしいと感じる人

フロントスタッフとのやりとりが煩わしく、無人でチェックイン・アウトが可能な一棟貸しに魅力を感じる方々。特に海外の方は、言葉の問題から無人スタイルを好まれる場合もあるようです。

●暮らすようにステイしたい人

旅館やホテルなどの「非日常」空間ではなく、旅先でもその土地の「暮らし」に近い体験をしたいという方々。そもそも巻組の一棟貸しゲストハウスの所在地はどこも、有名な観光地ではありません。わざわざそうした場所を訪れるからこそ、宿泊施設にもビジネスホテルとは違う「日本らしさ」「その土地らしさ」を求めておられる方は少なくないようです。

空き家活用「レトロ物件」ならではの価値

これらのニーズに注目しているのは当然、巻組だけではありません。

宮城県内でも個人経営の民泊型はもちろん、大手の不動産会社やハウスメーカーが運営する一棟貸しゲストハウスも増えてきている印象です。ただ、そうした施設はきれいな新築一戸建てが大半で、巻組のような「レトロ物件」は少ないのではないでしょうか。

巻組の商材はあくまでも「空き家」です。空き家はたいてい築古ですから、それを宿として運用しようとすれば新築とは違うハンデがたくさんあります。例えば、古くても清潔感は重要なので清掃には殊に念を入れていますが、一部の方の「古い=汚い」という固定観念を覆すのは不可能に近いかもしません。

いっぽう、空き家には空き家ならではの魅力があります。いわゆる「古民家」というほどの建築的・文化的価値はなくても、昔、家主が建てた家というのは多かれ少なかれ、その土地の暮らしや文化、風土を反映しているもの。近年の大量生産型の建売住宅にはない「味」があるのです。そこに価値を見出してくれるような方々が、巻組のゲストハウスにお泊りいただいていると思います。

昨年11月に「二地域居住促進法」が施行されました。国交省の調によれば、日本では二地域居住に関心のある層が3割近くに上るそうです。そういうライフスタイルが根付いていけば、特段の観光資源がない街でも、滞在者に地域の面白さを発見してもらうことで、関係・交流人口を増やすことが可能でしょう。

巻組は、そうしたマーケットの拡大に合わせ、「暮らすように泊まれる」民家一棟貸しのニーズは今後も高まると予想します。既に利用者向けに周辺マップやお店の情報提供などは行っていますが、今後は地域の他の事業者さんたちと連携し、その地域の「日常の面白さ」に触れられる宿泊体験が提供できるよう、ソフト面のサービスも充実させていきたいと考えています。

巻組の一棟貸しゲストハウスの展開を、これからもどうぞお楽しみに!